この記事は、実務経験のあるプロカメラマン・フォトグラファーが監修しています。
自宅や観光地など、建築の写真を撮るときに、見たままの印象を写し出したり画角内にバランス良く撮影したりすることって難しいですよね。
日常的に撮影する機会が少ないからこそ、どう撮れば良いのかわからない、という方もいるのではないでしょうか?
建築の写真を撮るときにはイメージに合わせたレンズ選びや水平・垂直、構図などを意識することがポイントになります。
今回はそんな建築の写真の撮り方をご紹介します。
建築写真の基本的な撮り方はもちろん、外観、室内のそれぞれの撮り方、おすすめのレンズなども併せて解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
建築の写真の撮り方の基本
早速、建築写真の基本の撮り方について解説します。
ここで解説する撮り方は、外観や室内に問わず建築物の撮影において大切なポイントになるので、しっかりチェックしておきましょう。
建築写真撮影のときのカメラの設定値
まずは建築写真を撮るときのおすすめのカメラの設定値を解説します。
★スマホカメラ(iPhone)の場合
スマホカメラで撮影する場合は、こちらのカメラモードで撮影すると良いです。
- パンフォーカスで撮りたいとき→標準アプリで撮影
- 背景をボカして撮りたいとき→ポートレートモードで撮影
- 横長のパノラマ写真を撮りたい時→パノラマモードで撮影
★一眼レフカメラの場合
建築の写真を撮るときには、絞り値優先モードを使って撮影しましょう。
絞り値優先モードとは撮影者がF値を設定し、設定したF値に合わせてカメラ側がシャッタースピードを調節してくれます。
絞り値優先モードで撮影することで、画角に写る建物をパンフォーカスで撮影したい、背景をボカしてフォーカスしたい箇所を際立たせたい、などと撮りたいイメージに合わせて撮影できます。
- パンフォーカス(全体にピントを合わせる)で撮りたいとき→F8〜16ほど
- 背景をボカして撮りたいとき→開放値で撮影(F値を一番小さく設定する)
F値を撮影イメージに合わせて設定すると写真が暗くなってしまう、という場合はISO感度や露出補正機能を使って調節しましょう。
また、明るさが足りない場所で撮影すると極端にシャッタースピードが遅くなってしまうこともあります。
カメラ側が調節してくれるシャッタースピードが「SS1/100」以下にならないように確認しながらF値を調節してくださいね。
もし、SS1/100以下になった場合はISO感度を上げると良いです。
ISO感度は天気や撮影場所によって調節する
建築写真の撮影では、建物の外観や室内など目的に合わせていろいろな場所で撮りたいですよね。
撮影する写真の明るさを決めるISO感度は、天気や撮影場所によって設定値を変えましょう。
- 晴れた日に屋外で撮影する場合→ISO100程度
- 曇りの日や日陰などに屋外で撮影する場合→ISO200〜400程度
- 光の入りやすい(晴れ)室内で撮影する場合→ISO400〜1600程度
- 光の入りにくい(曇りなど)室内で撮影する場合→ISO800〜3200程度
まずは天候や撮影場所に合わせてISO値を設定します。
もし、ISO感度の数値を上げたいときには、上げすぎないように注意しましょう。
ISO感度を上げすぎてしまうと画質が下がり、ノイズが気になってしまうことも。
ISO3200を上限にしておくと安心です。
水平・垂直を意識する
建築の写真を撮るときには、建物の水平・垂直を意識して撮影しましょう。
水平・垂直を整えて撮影することで、画角内がまとまり安定感のある写真に仕上がります。
もし、水平・垂直がズレてしまうと違和感のある印象に。
きちんと水平・垂直を合わせることで、建築写真らしいしっかりとした印象になるので、グリッド線や三脚、編集などを使って水平・垂直を整えましょう
グリッド線を活用しよう
撮影するときに、グリッド線を表示すると水平・垂直が意識しやすくなります。
一眼レフカメラやミラーレスカメラだけでなく、スマホカメラでもグリッド線を表示できるので、ぜひグリッド線を表示して撮影してみてくださいね。
★一眼レフ、ミラーレスカメラの場合
一眼レフやミラーレスカメラなどのカメラの種類やメーカー、ほぼ全てのカメラにグリッド線表示機能が搭載されています。
メーカーによって表示方法は異なりますが、設定画面から「グリッド」という項目を探してください。
一眼レフやミラーレスの場合、基本になる9分割だけでなく、より細かい線が表示される24分割、9分割に斜めに線が入る対角線が表示されるカメラもあります。
★スマホカメラ(iPhone)の場合
スマホカメラ(iPhone)でグリッド線を表示するには、設定アプリにあるカメラの項目から、グリッドをONにしましょう。
標準カメラを起動すると白いグリッド線が表示されますよ。
多少の傾きは編集でカバーしてもOK
人が撮影するのでどれだけ意識しても小さな傾きは付きもの。
そんな小さな傾きは撮影後に編集して修正することもできます。
Lightroomなどの専用アプリやスマホカメラ(iPhone)の標準アプリで傾きを修正しましょう。
ここでは最も手軽に修正できるスマホカメラ(iPhone)でのやり方について紹介します。
★スマホカメラ(iPhone)の場合
写真アプリを開き、修正したい写真データを表示します。
画面右上にある「編集」をタップし、画面下にある3つのマークのうち一番右端のマークをタップ。
傾き補正をタップして調整しましょう。
このとき、自分で微調整するよりも自動調整した方が便利ですよ。
どうしても傾きが気になる場合は「三脚」を使ってみよう
きちんと水平・垂直を意識したいときには「三脚」を使いましょう。
三脚を使ってカメラを固定することで確実に水平・垂直を保った写真が撮れます。
また、三脚でカメラを固定すると手ブレが防げます。
人物と一緒に撮りたいときにはどちらが主役か考える
建築物の写真を撮るときに、建築物のみを撮るのか、あるいは人物を一緒に撮るのか、によって適切な構図が変わります。
とくに、人物と一緒に撮りたいときには
- 建物を主役にした写真を撮るのか
- 建物は背景に、人物を主役にした写真を撮るのか
を意識しましょう。
建物を主役にした写真を撮る場合にはあくまでも人物は引き立て役になるので、建物の奥行きを意識するように引きの構図で撮影すると良いです。
また、建物を背景に人物を主役にした写真を撮る場合には、背景となる建物の中心をどこにするか考えることが大切です。
適切な色味で撮影する
建築の写真を撮る際には、適切な色味で撮影するようにしましょう。
建築の写真を撮る際に、時間帯や光の状態によっては暗い場所が目で見た印象以上に暗く見えたり、白い部分に光が反射して白飛びしてしまったりすることがあります。
黒潰れや白飛びしてしまうと、建築物のディティールが崩れてしまい、デザインがわからなくなってしまうことも。
撮影時に黒潰れや白飛びしてしまった写真は、レタッチでは修復することが難しいです。
そのため、撮影時からその日の天候や明るさに合わせて、露出補正やISO感度を調節して撮影しましょう。
おすすめの使用レンズ
★スマホカメラ(iPhone)の場合
スマホで建築の写真を撮る際には、、広角または超広角レンズがついている機種ならそれを使用しましょう。
別売りの広角レンズや、パノラマモードで撮る方法もあります。
★一眼レフカメラの場合
一眼レブの場合は、広角ズームレンズ、または標準ズームレンズを使いましょう。
中でも、焦点距離24mm以下までカバーできる広角ズームレンズがおすすめです。
なぜなら、肉眼で見るよりも広い範囲を写し出せる広角ズームレンズを使うことで、大きな建物も画角内に収められるからです。
さらに、広角レンズは望遠レンズよりもボケにくく、手間から奥までピントが合わせやすいことが特徴。
広い範囲を写しながらもピントをしっかり合わせることで、建物の魅力を引き出しながらシャープな印象を与えるのです。
ただし、広角レンズはレンズの持つ特性上、歪みが出やすいことがデメリット。
歪みを補正してくれる「光学性能の高い」レンズを選ぶと良いでしょう。
また、標準ズームレンズは建物の中でも一部の箇所をフォーカスして撮影したいときにおすすめです。
「焦点距離50mm前後」の標準ズームレンズを使うことで、目で見たイメージのまま無理なく撮影できますよ。
また、標準ズームレンズの望遠側で撮影すると背景が圧縮されてボケ感を演出できます。
- 建物の全体を写したいとき→広角ズームレンズ
- ピックアップしたい部分のみ写したいとき→標準ズームレンズ
このように、撮影したいイメージに合わせてレンズを使い分けても良いです。
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建物外観写真の撮り方
ここからは外観写真の撮り方について解説します。
先ほどお伝えした基本の撮り方に合わせて、意識してみると良いでしょう。
平屋住宅は「ローアングル」で建物の安定感を見せる
ずっしりとした印象のある平屋住宅では地面に近い位置でカメラを構える「ローアングル」にして、安定感があるように撮影しましょう。
ローアングルと、先ほど解説した真正面から撮ることを意識することで、庇の下も写し出せるので、バランスの取れた写真が撮れます。
また、平屋住宅を撮影する際には安定感が演出できる構図で撮影するのがおすすめです。
- シンメトリー構図(二分割法構図)
- 三角形構図
- 日の丸構図
二階建ての建物は全体のバランスと余白を意識する
二階建ての建築物は、余白の取り方を意識してバランスの良い写真に仕上げましょう。
基本的には、目線の高さである「アイレベル」から撮影すると良いです。
駐車場や庭など、どれくらいの面積が外構として使われているかによって適切なバランスが変わりますが、可能な限り建物に近づいて、バランス良く背景や余白を整えましょう。
また、二階建ての建物を撮影する際には以下の構図がおすすめです。
撮影したいイメージや建物のデザインに合わせて合う構図を探してみてくださいね。
- 三角形構図
- 日の丸構図
- 三分割法構図
- 四分割法構図
真正面、振り構図の写真をそれぞれ撮って建物の形を写し出そう
建築物の外観を撮影する際には、建物の全体像を写し出す「真正面」からの写真と「振り構図」の写真をそれぞれ撮影しましょう。
振り構図とは建築物を斜めから撮影することで、正面からはわからなかった奥行き感や建築物の要素を見せることをいいます。
振り構図で撮る場合のアングルは、真正面から撮った写真では表現できなかった部分をどのくらい写し出したいのかで適切な位置が変わります。
真正面から撮影したあとに建築物を確認し、どの部分が見えていないか、観察した上でアングルを調節すると良いでしょう。
振り構図では、建築物の形を忠実に残しながらも、全体の形がイメージしやすいように撮影することが大切です。
室内(内観)写真の撮り方
ここからは建築写真の室内の撮り方について解説します。
室内の写真を撮るポイントは「光」と「広さ」を意識すること。
光と広さを意識して撮影することで、建物のデザインを活かした写真が撮れますよ。
一つずつ詳しくみていきましょう。
自然光がしっかり入る時間帯を狙って撮影する
室内写真を撮るときには、できる限り自然光がしっかり入る時間帯に撮影すると良いです。
なぜなら、柔らかくふんわりとした光の中で自然な色合いの写真が撮れるからです。
光の量が足りない場合はストロボやフラッシュを使いたくなりますが、ストロボやフラッシュの使用はできる限り避けた方がベターです。
影の写り方や明るさが不自然な印象に仕上がってしまいます。
後ろに下がって少しでも広さが出るように撮影する
室内の奥行きや広さを適切に表現するために、室内写真では「広さ」を意識して撮影することが大切です。
一般的に意識しなければどうしても寄り気味で撮影してしまうため、いつもよりも後ろに下がって少しでも広さや奥行きが出るように工夫して撮影しましょう。
真正面や振り構図に加え、建築物のデザインが表現できるアングルで撮影する
室内写真も外観写真と同じように、真正面からの写真や振り構図で撮影しましょう。
室内写真でも基本のアングルは、目線と同じ高さの「アイアングル」で撮影します。
そのほか、建築物のデザインに合わせて表現方法を変えてみても面白いですよ。
例えば、天井の空間を表現したい場合は、ローポジションでカメラを構えてやや上の方に向かってカメラを向けて見てください。
全体像を撮りたいときにおすすめ!パノラマ写真の撮り方
ビルのような高さのある建物や平屋住宅のような横に長い建物の全体像を撮影したいときには「パノラマ撮影」を活用してみましょう。
パノラマ撮影は動画の技術を使って合成しながら写真を組み合わせていくので、撮影中にカメラがぶれると変形されて写し出されることもあります。
建築物を忠実に撮影したいときには、ブレないように意識しなければいけません。
一眼レフやミラーレス、スマホなど、どの機材で撮影する場合でも、パノラマ撮影のときには「三脚」を使って撮影するとブレにくいですよ。
スマホカメラ(iPhone)での撮り方、一眼レフ・ミラーレスでの撮り方、それぞれ解説していきましょう。
スマホで撮るパノラマ写真
手軽にパノラマ写真を撮りたいときには、スマートフォンを活用するのがおすすめです。
ここではiPhoneでパノラマ写真を撮る手順について解説します。
- カメラアプリを起動し「パノラマ」を選択する
- 撮りたいイメージに合わせて構図を決める
- シャッターボタンをタップし、左から右へゆっくりとスマートフォンを回転させる
以上がスマホ(iPhone)で撮影するパノラマ写真のやり方です。
広範囲の写真が撮りたい場合には、長く回転させるとOKです。
一眼レフ・ミラーレスで撮るパノラマ写真
一眼レフ・ミラーレスでパノラマ写真を撮るときには、基本的に以下の手順で行うと良いです。
1.構図を決める
パノラマ写真をイメージ通りに撮るには、構図をしっかり決めておくことがポイントになります。
一度、広角レンズで撮影することで、どこをどのように撮影したいかイメージが湧きやすくなりますよ。
カメラで撮影するよりスマホで撮影する方が手軽なので、構図決めの際にはスマホでパノラマ写真を撮ってみるのも良いでしょう。
2.三脚にカメラが垂直になるようにセッティングする
パノラマ写真を撮るときには、三脚に加えて「パノラマ雲台」を使いましょう。
パノラマ雲台を使うことで、安定して垂直が保てますよ。
三脚にカメラをセッティングしたら、撮りたい場所の中心部で構図を合わせましょう。
このとき、余白を多めに取っておくと編集して微調整したいときに便利ですよ。
3.連続して撮影する
準備できたら連続して撮影します。写真同士が1/3ほど重なるように撮影しましょう。
パノラマ雲台に記入されているメモリの15°ずつずらして撮っていくと良いです。
4.撮影した写真を編集してパノラマ写真にする
撮影した写真をLightroomなどを使って合成しましょう。
取り込んだ写真の色味や明るさを調節したい場合は合成する前に行ってください。
合成したい写真を全て選択したら、
「ツールバー」→「写真」→「写真を結合」→「パノラマ」
をクリックするとプレビュー画像が表示されます。
あとは切り抜きなど細かい設定を行い、「結合」をクリックしたら完成です。
まとめ
今回は建築の写真の撮り方について解説しました。
どんな建築物を撮る場合でも、水平・垂直を意識し、建物の奥行きや広さが伝わるように撮影することがポイントになります。
少し難しいですが、三脚を使ったりグリッド線を活用することで、意識しやすくなるので、建築の写真を撮るときには活用してみましょう。
ぜひ、建築の写真を撮る際に参考にしてみてくださいね。
この記事は、実務経験のあるプロカメラマン・フォトグラファーが監修しました。